今日は、4月1日。

「……、成歩堂…、それは、…本当、なのだろうか」

去年の今頃だったら、こんな事を彼に言っても、そうか、で終わっていただろう。

「ぼくね、好きなひとができた」


エイプリル☆コスプレイヤー


「…っ、…、じゃ、あ…」
「うん、別れて」
「、…そ、んな…、急に…、私は…」
「困る?」

御剣は、うなづく。
かわいいなあ。そんな筈ないのに。ぼくがおまえ以外に、興味を持つはずないじゃないか。
そっと、頬を撫でる。
「…、成歩堂、…か、考え直しては、もらえないの、だろうか…」

すがるような声。甘い、甘い、おまえの声が。
…ぼくは大好きなんだ。
にっこり笑って。
「へえ、別れたく、ないんだ?」
ぼくの言葉にもう一度うなづく御剣は、泣きそうな顔をしている。
「じゃあ、ぼくのお願いかなえてくれない?」
「ああ、できることなら…、だから、成歩堂…」
「…いいよ?」
キスを贈ってあげると、御剣は少し震えながら、それに応えてくれる。

かわいい、かわいい、ぼくのみつるぎ。

ぼくと違って、なんでも持ってて優しくて正義感があって、純粋なおまえが、どうしてぼくなんかを、好きになってくれたんだろうね。
なのに、どうしてぼくは、それをうまく信じる事ができないんだろう。
だから今日もまた。こうやって、行事にかこつけて、理由をつけて。
愛しい人を泣かせるんだ。試してるんだ。
「本当、か…、…なんだろうか、その、頼みというのは」
おずおずと、御剣は、少しの畏怖を持って聞いてくる。

「これ、着て?」
自室へ戻って、クローゼットの中から、包装されていた服を、彼に渡す。
「…………、…っ…あ…、…わ、かった…、着れば、いいのだな」
「うん。ゆっくりでいいよ?じゃあ、ぼく、お茶を入れてくるよ、…着替えておいてね」

彼に渡した服は、秋葉原で購入した、一点もの。
ちょっとエッチな、メイドさんの服と、高校の制服だ。
ドアを締め我なら、思う。
似合うだろうなあ、御剣。どんな顔して着るだろう。
っていうか、よく怒らなかったよな。
…少しだけ、良心が痛む。






「御剣、紅茶はいったよ……」
「…あ、…まだ、うまく、着れてないのだ…」
「…いいよ、手伝ってあげる、御剣不器用だもんね?」
戸惑った結果、御剣が選んだのは、メイド服の方だったらしい。
それは胸元がぱっくり開いているし、ひらひらとしたレースが肌を刺激する作りになっている。色は黒と白で、ある意味とても清楚だ。

「いや、…、自分で…っ」
「なにがいやなの? うん、似合ってるよ。かわいい、御剣」
「…、しかし、…これは、女性用ではないか…」
「ちがうよ? ちゃんと男性用。サイズがまず、女性じゃないだろ?」
「…それ、は…そうかもしれないが…で、デザインが…」
「うん。…よし、着れたじゃない。ふふ」
「…き、キミは、私に女性の代わりをつとめろと、言っているのだろうか?だ、だったら私は…」
「別に。そんなこと露ほども思ってないよ?」
「、そう、か…」
「でも、女の子の服の方が可愛いよね。 ひらひらは、なんでも似合うんだね、御剣は」
手を伸ばして、やっぱり全然女の子ではない、彼に触れる。

「…あ、…成歩堂…、」
「もしかして、御剣、感じてるの?」
「いや、そのようなアレでは…」

「そのような、アレ、でしょ?」

下着もちゃんとつけてくれてるんだ。まあ、これを下着と呼んでいいのかわからないような代物だけどね。
透けていてやっぱりひらひらとしているそこに、視線を向けると、御剣は、みないでくれ、と小さく言った。
「こんなカッコして、感じちゃうんだね。」
「、っ…成歩堂、…やはり私を嫌いに…」
「さあ、どうかなあ。でも、君、―― 僕に抱かれたいんじゃないの?」
瞬間、君の顔は羞恥に染まる。
「…、」
「そうだろ?答えてよ、御剣。」

ベッドの上に座っている君を開帳させて、ゆっくりと太股を撫でていく。
「、あ…」
「好きだろ?ぼくとのセックス」
「、…、…今日の、キミは、あまりにも、意地が悪い…」
「知ってるでしょ。 ぼく、性格最悪だから」
「…! そんな、こと、は、絶対にない。キミは優しい。私を、…闇から、救ってくれた。恩人だ。 だから、…このようなっ…う…、…わたし、は、
キミを、…っく…」
…心臓がきりきりと痛む。御剣が泣いている。
ぼくのせいで、傷ついてる。
…どうしよう。

「………あー…、だめだ、…これ以上は無理。ごめん」
「…え…」
御剣に、キスの雨を降らしていく。何度も、ごめんね、とささやきながら。
「成歩堂…くすぐったい、のだが、…」
「うん、…ごめん。好きな人なんてできてないよ」
「!…そうか、……しかしなぜ、そんな嘘を…」
「ほら、今日、エイプリルフールだから」
「…な、…なんだキミは、まさかそれで…」
「うん、ちょっとからかうつもりだったんだけど、…」
「それで私は、…こ、こんな用意周到なまねをしておいて、ただですむと思うなよ、成歩堂」
「…、別れたくなった?」
「そ…っそんなはずは、ないのだよ…」
「よかった。」
「しかし、もう二度とこのような遊びはやめたまえ。心臓に悪い。 …わたしは、君に飽きられたのだと思って…」
「…御剣」
「……好き、でいてくれて、よかった…」
安心したように、御剣はぼくに抱きついてきた。珍しいなあ。
顔をすりよせてくるから、優しく髪を撫でてあげる。
「…だいすきだよ。」
「、…わたしも、キミが、好きだ…」
そのまま背中も撫でて、次は服の中も撫でていく。
ぴくん、と反応していく御剣は、正直でかわいい。
「ねえ、…しようか」
「……、…うム…そう、だな…」
顔をのぞき込んで言えば、視線を反らしている。
「御剣、こんなになってるもんね?」
「あ、…、…」
「苦しそう、なめてあげるね?」
「っ、あ、…ぁん…」
下着の上から舌を這わすと、御剣は甘い声で、ぼくの髪をつかんでくる。少し痛くて、少し、…うれしい。
「…ん、…」
「成歩堂…、っ…っは…」
甘噛みして、舐めて、小さく吸う。
「頼む、…きゅ、窮屈、…で、いたい…」
「うん、真っ赤だもん」
いじめすぎてしまったから、下着をずらして出してあげる。
艶めいて濡れて、… 扇状的で。イヤらしい。

「やっぱり似合ってる、御剣」

せっかくだから、記念写真。
カシャ、とそこにあった御剣のデジカメで撮影する。
「け!消したまえ!!」
「え〜……個人用だよ。それでもだめ?」
「だめに決まっている!!」
「ちぇ…全体的に可愛く撮れたのに。…見てみる?」
「バカモノ!見るか!!」
「…じゃあ、…続きする?」
にやにやとわらって、カメラの縁で、御剣のアレを撫でる。
「ぅう、…っあ、…ぁ…」
「気持ちよさそうだね」
撫でてあげると、御剣の甘い声が部屋に響いてく。
「ねえ、つづきしたいでしょ?…一枚だけ、許してよ」
「……………、…くそ…」

ちいさく陥落した御剣に、ちゅ、とキスを贈る。

「ねえねえ御剣、これ、使ってもいい?」
「………ふ、ふつうがいいのだが…」
「もちろん最後はふつうにするよ。ねえ、お願い〜」
「……、…っキミは、本当に趣味が悪いな」
「これくらい誰だってやってるって」
まあ、そんなわけないんだけど。うそも方便。
ぼくは、ついついショップで購入してしまった、バイブレーターやらローターやら、その他もろもろの道具一式を、ベッドの上に並べてった。
御剣は目を反らして、まったく見ようとはしてない。
「そのような…アレは…、困る」
「じゃあ、いっこだけで今日は我慢するから。」
「それは…譲歩のつもりなのか、成歩堂?」
「うん」
「……、まったく、キミは…」
「サービスするから、ね?」
「………はあ。…好きにしたまえ、どうせ止めても、するのだろう?」
「うん」
「うれしそうに、言うな、バカモノ」
こつん、と額こづかれた。真っ赤になりながら、それでも御剣はぼくを拒絶しない。

「こんなものに給料をつかうか…まったく」
「ええ〜、よくできてるじゃない、これ、最新式だって。」

ぼくは御剣にジェルを塗りたくって、すこしずつ指でならしていった。
「あ、…、成歩堂、…、それは、…なんだ…?」
「うん、なんかリモコンついてる。…なんかおもしろい機能ついてるなあ。…うん、やっぱりこれにしよう」
「っ、…き、キミは、…見ているだけ、なのか…?」
「まあ、最初、はね?」
「…なんだか、滑稽ではないか、私が…」
「そんなことないよ。えっちで可愛い」
「まったく、うれしくないぞ…、ぁ! な、…っあん…!!」
「ちょっとずつだから、こわくないよ」

御剣にこんなやらしー道具を使ったことはなかったから、彼はすごく戸惑ってるみたいだった。
「これ、…は…っ…ん、ん、ん…っ」
「うん、入ってってるよ。どう?」
「どう…、などと…きくな、…黙って…ろ…っ…ふ…っ」
「多分、ここらへんまで入ってると思うよ」
ぼくは御剣の下腹部を撫でてあげる。びくん、と彼の身体が戦慄く。
指でそっと押すと、堅い感触がそこにあるように思えた。
「、…や、めろ…っ…さわるな、…」
「じゃあ、このままでいいの?」
「…あ、あ…ぁっ…それもいやだ…」
「ワガママだね?」
くすくす笑いながら。道具を上下に動かしていく。
「あっ…や、…っあ…、?」
「御剣、すごいことになってるよ?」
張りつめた御剣自身は、触ってないのにいっちゃいそうだ。
少しだけふれると、御剣がせっぱ詰まった声を出した。
「…、い、…き、…たい…、」
「うん、いいよ?」
軽くしごいただけで、それはあっと言う間に果てた。
ああ、こっちを写真に撮ればよかったなあ。

「はあ、っは、…はあ、…もう、いいだろうか?」
「いや、もうよくないけど?」
「…、…まだ、するのか…」
「だってスイッチ押してないし、半分しか入れてないよ」
「っ…不満そうな声を出すな、第一キミはっ」
「…えい」
「…!?あ、…っっうあっ…こら、成歩堂、人の話をっ…っく…」

卑猥な音が聞こえる。おもしろいなあ、このバイブ。
どんどん勝手に中に入っていくし。どういう作りになってるんだろ。解体してみようかな。
「どうなってるんだと思う、御剣?」
「…しるかっ…いいか、ら、もう、ぬけ…ぁ、あ、ァ…ん」
「なんで、気持ちよくない?」
「私は、き、キミが、いいのだよっ…!」
「あー…、…それ言われると弱いんだよね、ぼく」

御剣の額にキスをして、そのまま唇を奪いながら、片手で道具を抜いていく。
「ん、ん…ぅ…っん」
そうして、代わりにぼくを、御剣にあげる。

「、っ…あ、ああ、あ、なるほど、…う、…っ…」
「…はは、…すごい、締め付けてくるんだけど、…」
「ああ、…っ…っひ、……っく…ぁう…!」
「御剣、きもちいいんだ?」
「、い、…いい、…っ、…っあ、あぁっ」

「そう、よかった」






ほんとによかった。

おまえが、…、どんなぼくでも、受け入れてくれて。
困りながら、戸惑いながら、それでも、御剣は、いつも御剣の全部で、
ぼくのすべてを、受け入れてくれるんだ。
あのね。
本当はいつも、泣きそうになっているのは、ぼくなんだよ。

本当はいつも、こわがってるのは、ぼくなんだ。
だからね。
別れないで。あきれないで。飽きないで。

ずっとずっと、ぼくだけの、御剣でいてよ。


「…、おねがい、…れいじ」
「成歩堂…?どうしたのだ…?」
「ううん、なんでもない」


今日は、4月1日だから。

自分にも、小さく、嘘を吐く。

「…ほんとうに、よかった。―― おまえがぼくを好きでいてくれて。」