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「なあルッチ、お前の夢ってなんだ?」

そうおれが聞くと、ルッチは妙に困惑した表情を浮かべていた。



この声が今伝わるとしたら、おれはお前に何て言おう。

ガタついた身体で四角い積荷の中で、一人、考える。 アイスバーグさんには、了解を取った。

今、海列車でアイツは、どこへ向かっているんだろう。

エニエスロビーに着いたアイツは、どこへ向かっているんだろう。


ルッチ。おれにはお前の。


先が――見えない。





「おい、聞いてんのか、ルッチ! お前の夢ッ!!」

いつものように酒の席で、いつだったか、ルッチに絡みながらそう聞いた。

『そんなもの、忘れたッポー』

するとハットリがおれの肩に止まり、そう答える。

「んなワケねーだろ? 憧れた職業とかよ、なりたかったもん、絶対あるだろ?」

『お前はどうなんだ、パウリー』

「おれ? そりゃ決まってんだろ! アイスバーグさんみてえな最高の船大工になる事よ!!」

『…がんばれっぽー』

「なんだよその気の抜けた返事は? っつーかよ、お前は違うのかよ?」

『――考えた事もない…夢、なんてな』


そん時は、なんて冷めたヤツなんだって思ってたし。

でも絶対、夢は一緒なんだって思ってた。

ルッチが自覚してねーだけで。

船大工として肩を並べてルッチ達と過ごした日々は。

今でもハッキリと言い切れる位に、皆同じ先を見ていたはずだ。


ガレーラカンパニーは、同じ仲間は皆、アイスバーグさんを、目指していたんだ。





――なあルッチ、お前の夢ってなんだ?――

その時、お前が困った様な面したのは。

お前が、それを望めない人生を送ってきたからなのか。

それとも。

望めない人生の中で、砕け散った夢の欠片を、今もまだ持っているからなのか。






「…もうひとつな、おれには夢があった…んだぜ、ルッチ」


炎の中では、伝えられなくて、悪かったな。

お前はもう、おれの声なんか、聞きたくねえのかもしれねえが。


押し付けてもいいだろ。


だっておれはお前を愛してんだから。

だってお前はおれを愛したんだから。


演技だなんて、言わせねえ。


死んだっておれは、言い続けてやるよ。



発進したロケットマンの音は凄まじい。


誰にも、聞こえないだろ。


お前にだけ、聞こえればいい。


なあ、ルッチ、おれのもう一個の夢も、おれはまだ叶える気でいるんだ。


「――おれ、お前を嫁さんにすんだ」



お前が作った飯を、毎日食いたいと言ったろ。

それによ。

おれはそんな器用じゃねえから。

お前がいねーと、駄目なんだよ。






ルッチ、おれにはお前の先は見えない。

だが、自分の先を決める事はできる。



未来のおれはな――、



お前とずっと一緒にいんだよ。




笑ってるお前の、側にいんだ。








END