後の祭り。 (前編) 成歩堂に、想いを打ち明けた。 本当は、悩んで、迷って、苦しくて。 それなのに、彼は簡単に笑って、キスをして、私を押し倒して、受け止めてくれた。 まさかそんな展開になるとは思ってもみなかったし、むしろ敬遠されるのを覚悟で、今日は夏祭りに誘ったのだ。 皆で出かけ、それが終わった後、別れる時にでも、いえたら。 そうしたら、結果はどうであれ、異国へ気持ちよく旅立てるだろう、と。 それが、想定の範囲外の行動を起こす成歩堂に、私の計画など通用せず。 ほんの少し歩いて、ほんの少し祭を楽しんで、金魚をすくい、りんごあめを食べ。そのまま、手を引かれて土手に座り、妙なムードになってしまった。 こちらから告白をするつもりが、先に、つき合わないかと言われ、戸惑った。 成歩堂はなにか意味をはき違えて言っているのではないか、と疑い。 それでも、手に触れられて、そうではないらしいと、思い直し。 そうして、そのまま神社へ行き、…おそわれてしまった。 嫌ではない、だが、いくらなんでも性急すぎるだろう、と心の中で1人思っていた。 それでも 頬を傷だらけにしてまで、私を欲してくれたのは、素直に嬉しい。 恋しい、と伝えたら、そのまま背負われ、今に至る。 ここは、私のマンションだ。 そうして、今、私はシャワーを浴びていた。 成歩堂も、一緒に、だ。 緊張してそちらを見ることができない。ただ、頭を洗っていると、手がのびてきて、私の体に触れた。 「、待て…、私はただシャワーを浴びたいだけなのだよ」 「うーん、結構我慢してるんだけどなあ」 そんなことはわかっている。 太股に、彼の雄が当たる。 …でかい。 なぜだ?身長は私の方が上だ。 それなのに、この差は、なんだ? 食べているものが違うのか? 肉か?いや、成歩堂はそれほど肉食ではない。そもそも食物で成長率が変わるわけはないし… 「御剣。どこ見てんの。…ぼくを見てよ」 「…う…、いや、…」 「ね、…かきっこだけでもいいからさ…だめ?」 「、…わ、私は先ほど…、だから、遠慮しておこう」 「…じゃあ、…そこにいて。 見てて」 「…え…」 成歩堂は、私に触れながら、己自身を高めだした。 目が、離せない。きっとこれは好奇心だ。 …心臓が、鼓動を強くしていく。 「、…はあ、…っは…、みつ、るぎ、…ちくび、舐めさせて?」 「っ…、み、見ていればいいのだろう…?」 「お願い。、ちょっとだけ…、」 「…す、…好きにしたまえ」 彼の瞳があまりに扇情的で、あまりに、熱い吐息が体にかかるから。 だからなのだ。 こんな、状態になってしまうのは。 触れられる、成歩堂の熱い舌に。 吸われて、甘く噛まれ、何度も、繰り返される。 「…あ…、っみつるぎ、…御剣ぃ…」 シャワールームにこだまする、成歩堂の聞き慣れた声が。 あまりに、鼓膜に甘く響くから。 「ちょうだい、…おまえの、…もう一回…」 「っ…、なる、ほ…ど…、」 上目遣いで、私にひざまずいて、成歩堂は、私の熱く猛る命に触れる。 ああ。 もう、どうなってしまってもいい。 キミが欲しい。キミが、…キミのすべてが。 「、して、くれ…」 かすれた声で言えば、成歩堂は、口元をゆがめて笑った。 いやらしい顔だ。雄の。 「うん…、御剣も、気持ちよくなってよ…」 私のマンションのバスルームは、わりと広く作ってある。 私の体格がいいと言うのが理由だが。 「ねえ、ここ、広くていいね…?」 「…、そう、か…?」 「こうやって、御剣と一緒に入っても大丈夫だし。」 一緒にバスタブに入っている、というのは、少々語弊があるかもしれない。 私の体はほぼ、浮いている状態だ。 彼に足をかかえられ、縁の部分に座らせられている。 とても、屈辱的な体勢、だ。 「…うム」 「…勢いで最後までしても怒らないでいてくれる?」 「、…っ…さ、最後…、か」 私とて、成歩堂への恋を自覚した時点で、いろいろと学習は、してあった。 しかし、絶対にそのようなアレな事を、彼をすることは無い、と想っていたので、…動揺を隠せない。 「怖い?」 「、そうではない、と言えば嘘になるな。…キミは、抵抗はないのか。 男の身体だぞ」 ぽつり、と言えば。 「これ見て、それ言うかなあ」 へらり、と成歩堂は笑って、自分自身を私のそれに擦りあわせた。 「っう…、っぁ…」 「……ああ、そうだ。はっきり言っておくね。 ぼく童貞だから」 「………っ…そっ…そうか。いや、キミは、女性とつきあっていただろう。大学時代に。それに、高校では…」 「セックスはしてないよ。その前に振られたし。…ってわけで、下手だと思うんだけど、そこは愛で補うから」 ちゅ、と額にくちづけられた。 「…私は、…その、…そうではない」 「うん、なんとなくわかる。向こうで女性に押し倒されて、 いただかれちゃったクチだろ?」 「き、キミはエスパーかっ!?」 「…違うよ、御剣の恋人だよ」 笑いながら、耳元で囁かれる。 別に、そんなものはどっちだっていい。 …むしろ、少しだけ、うれしいと思う自分がいた。 ああ。成歩堂の熱を知っているのは、私だけなのだな。 にやりと笑う彼は、どうしても、そうは見えないの、だが。 「御剣、…初めてをぼくに頂戴? ぼくも、そうするから。」 「…、…か、……かまわない。」 「ありがとう」 成歩堂龍一が。 すきだったのだ。 あいしていたのだ。 本当に、恋焦がれて。彼が欲しくて。 恋しくて、恋しくて、恋しくて。 想って泣いた夜、さえ、ある。 くるしかったのだ。 どうしようもなく。どうすればいいか、わからず。 親友、という関係性が、あまりに心地よすぎて。 キミの笑顔が、見える位置にいられるだけで。 満足すると思っていたのに。 ―― 深夜になると、キミで眠る自分を、嫌悪した。 裏切っている。汚している。 だから。 いっそ振られて、なにもかも、ゼロにしてしまえばいい。 …そう、思っていたから。 キミに触れられると、泣きたくなる。 キミが笑うと、泣きたくなる。 キミは、私をすきなのだろうか? 本当は、わからない。わかってなんか、いないんだ。 キミの気持ちは、見えない。触れられない。 答えが欲しい。 成歩堂。 成歩堂。 「…な、るほどう、…っ」 「うん、…ちゃんと、聞いてるよ」 手のひらに包まれながら、ゆっくりとした愛撫が続けられた。 成歩堂は自分でするからいい、と言って私が彼に触れようとするのを拒んだので、私はただ、彼に縋っていることしかできない。 「あ、…な、…るっ…ほどう、…成歩堂…っ」 水音が鳴る。彼は熱もった瞳で私を見つめていた。 そうして、 「、…っ…く…ああー、先にいっちゃった。ごめん」 「は、っは…、いい、のだよ…っあ」 ぺろり、と彼が唇を舐めている。 神社での一時が、脳裏をかすめた。それだけで達しそうになる。 「ねえ、してほしい?」 「…っ…、ああ…」 「素直だな、おまえ…かわいいよ」 ちゅ、と先端に口づけられる。そうして、2度、吸われた。 それは、水音に混ざって、私の耳に届く。 「、ん、…、ぁは、…っ」 「…っ…御剣…、いって…」 「っ…、あ、ァ…っ…、う…っっ」 気持ちがいい。どうにかなりそうだ。頭がぼうっとする。 のぼせたのかもしれない。 不意に、冷たさに身体がはねた。 「、っあっ…?」 成歩堂が、私の汚れを、水で流したようだった。 「キミ、は…、なぜ、お湯にしない…冷たいではないか」 「うん、けど、その方が刺激的だろ?」 「…、異議あり、だ。 ……絶対にキミが童貞とは認めない」 「やだなあ、本当だってば〜」 くすくすと笑いながら、成歩堂は、私の首筋にキスを落とした。 「やっぱりベッドに行こうか?」 「…そうだな、だが、身体を洗いたい」 「手伝うよ?」 「遠慮しておく」 こつん、と彼の額を小突く。 まだまだ、夜は長そうだ。 後編へ、つづく。 |