お家で、デート。




どうも、成歩堂龍一です。
今日はすっごく珍しく、御剣が自分のマンションにぼくを招待してくれました。
…ごめんなさい、ちょっと嘘つきました。 ホントはぼくが、勝手に押しかけただけ。
だって、御剣が丸々一日お休みの日なんて、めったにないし。 しかも、それがぼくの休みと重なるなんて事は、今まであった事がないんだ。
メールをひとつ入れて、御剣のマンションのインターフォンを鳴らす。 すぐにドアは開いた。
ちょっと面倒くさそうな顔をした、彼に挨拶がてら、お土産を渡す。

「はい、コレ。御剣、この前見てたでしょ?」
「…うム。…その、礼を言う。 ありがとう」
「いえいえ、可愛い恋人のためだもん」

あ、そうそう。 ぼく、成歩堂龍一と、御剣怜侍は。 もうすぐ付き合って2ヶ月半になるんだけど。

「…それでね御剣、ほら、ぼくらって、まだ…ちゃんとしたデートしたことないじゃん?」
中へ入ってリビングでお茶を入れている御剣の背中に、そう話しかける。

「…まあ、言われてみれば、そうだが」
「別に往来で手をつないでキスをしたいって…そこまでは望んでないんだけど、―― いや、できればしたいんだけど〜」
「断る。」
「……そう、じゃあ、また…来るね…」
カタン、とわざとらしくイスから降りて、拗ねてみせる。 だって、そんな思いっきり否定しなくてもいいだろ。
ホント取り付く島もないんだから…。

「成歩堂、待ちたまえ。」
「へ…」
「ここで、デートをすればいい。 トノサマンのDVDを一緒に観ようではないか」
「御剣ぃ…」

「ふっ…、仕方のない男だ。 さあ、きたまえ。ちょうど紅茶も入ったところなのだよ。」

本当、すっごい男前。かっこいい。でも。でもね御剣…。
(…どうやってトノサマンのDVDで、いいムードに持っていけばいいんだよぉ…っ)





ふたり、ベッドに座って、背中にクッションを当てて、並ぶ。
手をつないじゃったりなんかして。 ああ、なんか恋人って感じ。 ちょっとくすぐったいような気分になる。 
ぼくって単純。

「なんか、楽しいかも」
「そうだな。このような時間も、キミとなら、また、格別なものになるのだよ」
「…御剣…」

キスをしかけようと、肩を抱く。
いいよね? なんかもうすごいおまえ可愛いし。

「あ、はじまるのだよ、静かにしてくれたまえ。 このシリーズは、私のお気に入りなのだ」

はい、スルーね。 わかってたけどね。
いや、いいんだけどね。まだまだ家デートの時間はあるんだし。
―― ぼくとトノサマンどっちが好き?なんて、言わずもがなだもんなあ。
トノサマンに決まっている。って、一刀両断されそうだもん。
それに。
わくわくした、小学生の時と同じ、輝いた瞳で液晶画面を観る御剣が。
かわいくて、好きだからさ。 そうっと手だけ重ねて。
DVDを観る、おまえを見る。

「…」

「…っ…そこだ、そうだ、…そうなのだよ…」

「…」

かわいいなあ。夢中だし。 そうして30分がすぎたころ、御剣が、こっちを向いた。
「ん? どうしたの」
「その…、だな、キミは、退屈ではないだろうか、と…」
「そんなことないよ。 だって御剣見てるから」
「、…っでぃ、DVDを見たまえ…!」

顔、真っ赤だし。あーもう、あと一話分くらいは、我慢しようと思ったんだけどなあ。
ちゅ、と唇を奪った。そうして舐めてく。
みつるぎが、ほしいなあ…、とつぶやきながら。

「おいっ…、まだ、昼間だというのに…っあ」
「だって、24時間恋人なんだからー、関係ないよ〜」
「いや、しかし、ぁ、…」

ベットで観ようとしたのは、すぐにこうできるからなんだよね。
昼間の明るい、太陽に照らされてる白い肌が、少しずつ朱色に染まってく。

好き、大好き、愛してる。耳元で囁いていく度、抵抗は薄れていく。
熱持っていく体。汗ばんでく。それを舐めて。
「御剣ぃ、…したい…」
「っ…、あ、…成歩堂…」
「ねえ、いいでしょ? だめ?」
「…、あ、…勝手…すれば、いい…」
「うん、そーする…ね。」

おまえは極度の恥ずかしがり屋で、自分からぼくを求めるような言葉なんて言えないから。
その分の、2倍。ううん、1000倍は、愛を囁いてあげる。 代わりに求めてあげる。

「…終わったら、いくらでも観てていいから…」
「、いい…、から……」
「ぼくが、ほしい?」
一度間をおいて、少しだけ頷く御剣。 それがおまえの精一杯だって、ちゃんとわかってるよ。




休日でも脱がしにくい服だけど。ジレた感じが、たまらない。
「成歩堂ぅ…」
甘えた声で、髪を触ってるときは、我慢ができない時。

「うん、してあげる」
こくん、とまたうなづくから。

下半身に手を伸ばして、片手でジッパーを下げてく。 反り上がってきているそれに、ちゅ、と口づける。
「ぁ、ぁ、ん…」
「すごいね。すぐいっちゃいそう?」
「…ば、ばかもの…そ、…んな、こと、を、いうな…っ」
「…だって、かわいいから」

にやって笑いながら見上げると、扇情色に染まった瞳に出会う。
ああ、ほしいんだね。
いいよ。

思い切りくわえて、吸って、擦って、
「ひ、ぁっ、なる、待っ、…あ、あ、っ」
好きなくせに、恥じらう御剣。いやらしい事なんて、言えない御剣。 体は正直なのにね。

「…や、あ…っく、…いく…、離したまえ…」

肩を痛いくらいにつかんでくるから。わざと、甘く噛んで。絶頂を促す。
「ふ、…っあ、う…」
「…なに、顔にかけたいの?」
「ち、違うのだよ!!」
「じゃあ、ほら、…」

自分の指を舐めて、御剣の中を探る。
「っあ、だめ、だ、…っほんとに…」
「なんで? せっかくの家デートだもん、御剣を…よくしてあげなきゃ…」
力の抜けた体だから、やすやすと御剣はぼくの指を受け入れてく。びくん、びくん、と跳ねる体と。 
ぼくにまでかかってくる、汗。目に入って、ちょっとだけ痛い。

「あ、…、ぁ、…っ…っ」
「大丈夫だよ。ぼくしか見てないんだから。…思い切り、乱れてよ…」
「、う、るさいぅ、あ、…キミは言葉が多いのだよっ…!!」
「演劇出身だから。つい、さらさら出てきちゃうんだよね」
「そん、理由になるか…っ…、…う、…っあ、…、だめ、…だ」
「御剣は、…かわいい声だけ、聞かせてくれればいいよ、アドリブもいらないし…」
「だ、黙れっ…あっ!」

スポットを弄くって、胸を舐めて。
これ以上ないってくらい、甘くとろかせて、あげたいんだ。
御剣の部屋で、ベッドの上で、BGMは、トノサマンだけどさ? こんなカップルいないよね。
「っ、なるほどう、…っ…ぁあああっ!」

おまえの声さえ聞ければ、もうほんと、最高の気分。
乱れた髪も、濡れた瞳も、紅潮した頬も、しがみついてくる、肢体も。
ぜんぶ、ぜんぶ、ぼくのもの。

「御剣、…よかった?」
はあ、はあ、と荒い呼吸を繰り返しながら、へたり、と御剣はベッドへ寝ころぶ。
「…キミ、は…、まったく、…私、ばかりではないか…っ」
「えへ。ごめん」
「…まったく、オープニングが終わってしまった。」
恨めしそうに、液晶画面に目を向けるから。
リモコンをとって、チャプター画面を開こうとした。
「ごめんごめん、すぐ戻すから……、ん?」
テレビ画面が消えた。あれ、間違えたかな。

「ねえ御剣、このリモコン…」
「いいのだよ。 …はやく、…こっちへきたまえ。」

ぽすん、と背中に、暖かい重み。
しあわせな。
御剣って、ほんと、たまに、凶悪だよなあ。

「…かわいいなあ」

「…うるさいのだよ」

「だって、さあ」

「にやにやと笑うな。いやらしいぞ」

「ええ〜、そっち向いてないじゃん」

「わかるのだよ…」

「ねえ御剣ぃ」

「なんだろうか」



「すきありっ」


トノサマンじゃあ、ないけどさ。 まあ、…剣を鞘に納めてしまおう。
首に絡まれた腕をつかんで、自分に座らせて。 何度もキスをする。
御剣の眉間には、シワが最初あったんだけど、だんだんそれは薄くなっていって。
「…、楽しいものだな。その、家での、デートというのは」
なんて、笑ってる。

「うん、じゃあ、もっと、楽しいことしよう」








バスルームに響く、御剣の甘い声。

浴槽を泡でいっぱいにして、さっき御剣に渡したお土産を浮かべる。
御剣って、たまにわかんないなってもの、欲しがるんだよね。 
それは、アヒルの親子の、なんか、お風呂に浮かべるやつ。 よく、子供が欲しがるやつね。
最初、御剣はそれに夢中だったから、ちょっぴり嫉妬して、また、襲っちゃってます。


「…あ、なる、ほど…っ…」
「御剣軽くなってるから、騎乗位も楽…、だね…っ」
「…は、あ、…っあ、……、ふ、…深、のだよ…っ」
「でも気持ちよくない?」
「、…っ…、あ、…っあぁ、…ん…」

「ねえ、今度はさ、どっか外でデートしようね?」
「…、わか、った…」
「約束だよ?」
「、…うム、…っわか、…た…から、成歩堂、…っ」
「うん――、もっと、…だろ?」

コクコク、と必死に頷く、かわいい恋人。
こうやって、ゆっくりでいいから、一歩ずつでいいから、もっと恋人になっていけたらなって、思うんだ。

腰を掴んで、落として、それを繰り返すと、御剣はぼくにしがみ付くようにして、快感に身を乗じている。
子供みたいで、本当に愛しい。
普段のキリっとした御剣も。こうやって、ぼくの前でだけ見せてくれる表情も。どっちも大好き。

御剣怜侍が恋人だなんて、ぼくってやっぱり、世界一の幸せものだね。

ちゅ、と口付けて、髪を撫でる。
「御剣、…いっていいよ…」
「あ、あ、う、…ぁあ、…っ、あああああっっ!!!」

何度目かの絶頂のあと。

はあはあと、水音のする部屋に響く、御剣の声。




「な、成歩堂…、」
「うん、何?」

「…思ったのだが、―― 普段と、そんなに変わらないように思うのだが。」

「…あ。」




なんとなく気づいて、可笑しくなって、誤魔化すように、抱きついて。
もう一度。おまえに愛を請おう。



―― いっつ、めいくらぶってやつだね。